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2010-03-05

J.ケッチャム 隣の家の少女

| 08:10 | はてなブックマーク - J.ケッチャム 隣の家の少女 - Beebo’s Juke Box Lounge


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両親を失くした美しい姉といたいけな妹が、預けられた親戚宅で遭遇する事件。


これはかなりおぞましい、酷い話です。正直、周りにお勧めすることは出来ません。

しかしとても優れた本で、私の読書体験を1つ深めてくれた。そんな強い力を持った小説だと思います。

ストーリーについては語りません。これから読まれる人もあると思うので。


この本は、屈折した憎しみ・恨み・妬みといった暗い醜いものを深く抉り出していて、それを「ほら。これをごらん?」というように読者に突きつけるようなところがあります。

私はそれを目の当たりにし、

「うわぁこれは!」

「おぞましい。吐気がする!」

「ひどい!」と

顔をそむけるような気持ちで読んでいるのですが、

何故かどうしても本を閉じることができない。

むしろ「次はどうなるのだろう?」

「こうなったら、次は?」

「この人たちっていったい・・・」と、

私の好奇心と想像力はいたく刺激され、

ページをめくる指ももどかしく

「早く!」

「次を!」と思ってしまう。


この本を読んでいる間、

私は登場人物のおぞましさを感じながら、

自分自身のおぞましさを同時に感じていました。


残酷なシーンを読んで怒りと恐怖を感じながら、

同時に次の展開を早く知りたいと思う気持ち。

「私の人生なんか、この子よりずーっとマシだなぁ」などと

優越感を持ったりする卑しさ。

暴力シーンでなぜか自分のセクシャルな欲望がかすかに刺激される感覚。


ケッチャムが「これをごらん?」と差し出したものは、私自身の中身だったかもしれない・・・と思うのです。


私は、本を読みながらそれを見つめ、

読み終わった今、心の奥底に再び静かに沈めました。

今後、私は心に「それ」があるということ、

ケッチャムが「ごらん」と見せたおぞましい何かが

自分自身の中に存在しているということを

折々意識していくことになるでしょう。


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ケッチャムはスティーブンキングとよく似ていると言われます。確かに似ていますね。

でも、キングの語り方がどことなく繊細で優しい青少年の印象を与えるのに対して、

ケッチャムは中年男性の乾いた語り口です。

ディテールで描いている町の空気や些細な美しいものの描き方などは本当によく似ているんですけどね。

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この小説、映画化されたらしい

(タイムリーにも3/13レイトショー公開です)のですが、

正直、これを映像で見たいとはまったく思いません。

私には耐えられないと思いますし、

原作本にまさる映画ってあまり見たことがないですし。

本音を言えば、これを映画化しようと思った人の経を疑います。許可したケッチャム本人の真意もよくわからない。

これなら同じ作者の「老人と犬」を映画化したほうがいいと思う。

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この話は実在の事件に基づいたもののようです。

日本にも類似した事件がありました。

こんなことが実際に起こりえるこの世界というものに、戦慄せずにいられません。

もしも様がいるなら、

せめて、私のような無名で無力な人間が祈る、

被害にあった人々の癒しと再起を心から願う、

このささやかな祈りを汲んでほしいと心から思います。